謎その6「エクスプローラー1(Ref.1016)の改造品について」

回答者・Wネームさん 


 スポーツ・モデルの中でも、特に人気を集めているのがエクスプローラー1。中でも、一世代前のRef.1016は、凄まじいプレミアが付いて販売されておるのは周知の通り。その魅力は、何と言ってもシンプルさにある。日付け表示すらない、一切の虚飾を排した究極のシンプルさがファンの心を捕えて離さないのである。

 しかしながら、そのシンプルさを逆手にとって、一方で改造品が横行しておるのも事実。なにしろ、モノがシンプルなだけに元手をかけずに作れて、しかも高く売れるのだから、こういった改造品で儲けておるような輩には、実においしいモデルという訳だ。つい先日も「ケース番号とリファレンス番号が一致しない」という実例(詳細についてはかずちんのサイト、ROLEX THE SIDEKICKを御覧下さい)が報告されたばかりである。

 さらに今回、当掲示板の常連、Wネームさんからも貴重な実例について御報告いただいた。御本人の了解をいただいので、ここに紹介するしだいであ〜る。

 

 左の画像は、Wネームさんが所有されていた1984年製Ref.1016の裏蓋を開けたところだ。右の画像は裏蓋。しっかりと「1016」というリファレンス番号が刻印されておるのが確認できますでしょうか。一見すると、いったいどこに改造があるのか判然としない訳です。しかし・・・。

 

 これがムーブメント全体の画像である。どうです? も〜マニアの方ならお気付きでしょう。そうなんです。本来Ref.1016には搭載されておるはずのないムーブメントが載っかっておるのです。

 Ref.1016に搭載されるムーブメントは、1960年代製造の前期型であればハック機構無しの「キャリバー1560」、1970〜1980年代製造であればハック機構付きの「キャリバー1570」であります。すなわち、WネームさんのRef.1016は1984年製造でありますから、本来であればキャリバー1570が搭載されていなければならんのです。ところが、この画像のムーブメントは何と「キャリバー1520」なのであります。

 一応、キャリバー1520について簡単に解説しておきますと、1560や1570のようにクロノメーター認定こそ受けていないものの、1960〜1980年代の長きに渡って使用されたROLEX史上に残る名作ムーブメントの一つなんですな。精度だって、Wネームさんによると「日差−1秒」だったそうですから、非クロノメーターといえども、決して低級ムーブメントなどでは無い訳です。ちなみに、このムーブメントを搭載したモデルとしては、Ref.5500のエアキング、Ref.5513のサブマリーナーなどが知られております。

 

 で、簡単に見分けるポイントですが、まずは左端の画像を御覧下さい。キャリバー番号の刻印が確認できますでしょうか。「1520」と刻印されております。

 続いて、その隣の画像はテン輪(金色の細い輪)であります。つるんとして、キャリバー1560および1570の特徴であるチラネジやアジャスト・スクリューが一切取り付けられていないのがよ〜くわかりますな。

 さて、この謎のRef.1016ですが、Wネームさんによると、日本ロレックスに提出したところ、ムーブメント(もちろんキャリバー1520)、ケース、文字盤ともに純正品である事が確認されたそうです。要するに、本物のROLEXとROLEXを合体させて超人気モデルRef.1016をでっちあげた、という事になりますか。これだと元手は確かにかかりますが、何せエクスプローラー1の中でも最も人気の高いRef.1016、それも後期型な訳ですから、これでもまだ儲けが出るのでしょうな。

 ところで、今回のコンテンツを作成するにあたって、別冊ビギン「エクスプローラー1」を改めてチェックしましたら、90〜91ページに「アンティーク・ロレックスの失敗しない選び方10カ条」が掲載されておりました。お持ちの方はぜひ御覧いただきたい。第8条には「ムーブメントが、そっくり取り替えられている可能性がある。本来の、その年式のモデルのキャリバー・ナンバーと一致しているか確認せよ」とあります。この10カ条は、別冊ビギンの他のシリーズには掲載されておりません。あえてこのようなページを設けたのも、それだけ人気のRef.1016を購入する場合には注意しなけりゃならんって事なんでしょうな。

 最後にWネームさんからのコメントで締めくくっておきます。「僕も、オープナー買ってみます。信じるのは自分の目だけですね。みんな気をつけてね!!」。


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